皆さん、特に鉄道についてあまり詳しくないという方、電車はどのようにして運ばれてくるか知っていますか?
「え?運ばれてくるの?」
「出来たら工場から走ってくるんじゃないの?」
「トラックに積む」
「考えたことないし・・・」
たぶんこういう方が多いと思います。
これらも正解っちゃ正解なんですが・・・
新しくできた電車は「機関車に引っ張られて運ばれる」のが一般的です。
これを「甲種輸送」と言います。
今回は電車はどのように運ばれるのか「甲種輸送」について説明します。
こんな方におすすめ
- 今まで知らなかったけど興味を持った。
- 見てみたいけどどうやってみたらいいか分からない方
ページコンテンツ
甲種輸送とは?
甲種輸送(こうしゅゆそう)
難しい!四字熟語かよ!パッと見の印象はこんな感じです。
甲種とは一般的に見る電車のことだと覚えておいてください。
一般的に鉄道車両は工場で製造され、完成すると注文した鉄道会社へ出荷します。
でも鉄道車両は大きいし1両ずつトラックで運ぶのはかなり大変です。
なので編成が組まれた状態の電車を機関車で牽引して運びます。

一般的な貨物列車 甲種輸送も形は違えどあつかいは同じ
つまり電車を運ぶ「貨物列車」なのです。
この場合電車も「製品」なので貨物として扱います。
よく車を積んだトレーラーを見かけると思いますが仕組みはそれと同じです。
新車を運転しながら送り先までもっていくと、途中で故障や事故が起こるかもしれないのであえてこのような運び方をしています。
どんな電車を運ぶの?
このページでは
- 新しい電車
- 古い電車
- 少し古い電車
の3つに分けました。
新しい電車の場合
新しい電車は工場から出荷され、鉄道会社まで運ばれます。
(5:25から輸送についての解説があります。)
こちらの日立製作所の動画では山口県の笠戸にある工場から九州佐賀県まで電車を運ぶ様子がネットで公開されています。
そして、この工場では東京メトロ有楽町線や西武鉄道最新型特急Laviewなど、最新型の車両を製造しています。
なので完成した車両は山口県から東京までのかなり長い距離を運びます。
古い電車の場合

203系廃車回送 この場合はJR貨物ではなくJR東日本が担当する。
古い電車場合、ボロボロになったり何十年も走って廃車となる電車を解体用の工場へ運びます。
SNSでは月1回のペースで、武蔵野線の車両がインドネシアのジャカルタに向けて回送されるときの写真がアップされています。
10月30日ということで、 #1030号機の日
EF64-1030牽引 武蔵野線205系ケヨ35編成 ジャカルタ配給
2019年5月17日撮影 pic.twitter.com/x6VUEbJfRZ— てつまみレ (@tetsumamille) October 30, 2019
武蔵野線の電車は新潟県の港まで運ばれて、そこからインドネシアまで船で運ばれジャカルタの鉄道で活躍します。
なのでこの時に車庫から港まで機関車が先頭になります。
この場合も工場までのルートで故障してダイヤ乱れが起きないように機関車が引っ張ります。
少し古い電車の場合
少し古い車両は東京で役目を終えた後、地方の別の会社で活躍するパターンが多いです。
そのために目的地まで運ばれます。

東急電鉄の車両が富山地方鉄道へ譲渡 これも甲種輸送になる引用:Twitterより
また改造を受ける際、専用の工場が遠くにある場合も当てはまります。
移動中の故障以外にも電気の有り無しや電気の種類の違いから
自力で移動するのが出来ないという理由もあります。
機関車はどれを使うの?
京急1000形の甲種輸送に就くEF66 引用:DVD日本の貨物列車 関西・北越編より
基本的に決まってはいません
貨物列車として運ぶのでJR貨物の機関車が先頭に立つことが多いです。
特に電車は重いので大型でパワフルな機関車が向いていますね。
画像のEF66は電気機関車の中でもパワーが強い機関車で、甲種輸送にはよく担当につきます。
配給列車とは?
甲種輸送と似た列車で「配給列車」というのがあります。
「配給」とは鉄道会社のエリア内で物資を運ぶための列車で電車も物資に含まれます。

キハ47形 風っこを所属先まで牽引して回送する これも配給列車
ただし、これが他社のエリアに入るときはJR貨物に輸送を依頼します。
そうなってくると「配給列車」ではなく「甲種輸送」になります。
ものすごく厳しい甲種輸送
甲種輸送は「ただ運べばいい」というものではありません。
運ぶためにはかなり厳しい条件をクリアしていかなければならないのです。
1.運転日程
最寄りの貨物取扱駅長に対して運送申込みを行い、発駅・着駅・荷送人・荷受人・車種・形式・両数・車両の大きさ・車両のブレーキ装置の有無・連結装置・運転速度・運転方法・運送希望日・付添人の有無等の記載された申込書又は貨物の図面を提出する。
引用:wikipediaより
輸送ルートを管轄するJR(例えば山口~東京だとJR西日本・JR東海・JR東日本)の
許可を受けて、予定から1年前にきっちりとダイヤを設定します。
2.車両の大きさ
運ぶときは線路の規格(幅・重さに耐えられるかなど)
駅のホーム・トンネル・カーブなど最適なルートを選ばなければなりません。

正面に白いシートでカバーされている図
また、輸送中の車両・特に正面はこのようにシートで覆われた状態で運ばれてきます。
大事な製品に傷をつけてしまわないようにです。
これらの条件をクリアすればどんな電車も運ぶ事が出来ます。
3.電車を受け渡してから
機関車で運ぶのは最寄りの駅までですが、ここから鉄道会社の路線に入って受け渡すまでが「甲種輸送」です。
JRの場合だとすぐに引き渡しが出来ますが、私鉄の場合接続できる駅からスイッチャーやほかの車両に引っ張られてはじめて入線します。

車掌車ヨ8000形が最後尾に連結、この時はコロナウイルス感染予防のため特別処置で3両となる。
甲種輸送には製造工場のメーカーから数人が添乗し、輸送中の異常がないかを確認、受け渡し後の試運転の付き添いなど万全のアフターケアを行います。
この場合、メーカーの担当者以外にJRの車掌を含めた添乗員は、車両後部に連結された車掌車なる貨車に添乗し、目的地まで届けます。
甲種輸送の時間が知りたい!
なんといっても一番知りたいのが「時刻」ですね。
ここでは時刻を知るための方法を3つ紹介します。
時刻を知るために必要なのは
- 詳しい知り合い
- SNS
- 鉄道情報誌
のうちどれか一つです。詳しく解説を進めましょう。
知り合いから情報を聞く
鉄道マニアの知り合いで詳しい方がいればその人から聞くのは有力な手です。
甲種輸送は物によっては時刻がパターン化されているので
周りに知っている詳しい方がいれば聞くのが良いでしょう。
デメリットは知り合いがいなければこの方法は使えない事と信ぴょう性が低いことです。
SNSで調べる
最近ではSNSで時刻を知る事が出来ます。
そういった専門情報を明かしているアカウントや、情報交換をすることで甲種輸送の時刻など情報を知ることができます。
配給列車の情報は意外と出回っていますし、急にツイートされることが多いのでこまめにチェックした方が良いです。
デメリットは情報が嘘の可能性があるので鵜呑みにしない事です。
鉄道専門誌を買う
一番正確で人脈を必要としない方法です。
特に「鉄道ダイヤ情報」という月刊誌の巻末には
臨時列車の他に甲種輸送の時刻が載っています。
100%正確な情報を知るには1番いい方法です。
デメリットはお金がかかることと配給列車の時刻は掲載していないことです。
個人的には新車の甲種輸送は「鉄道ダイヤ情報」を買う
配給列車はSNSでまめにチェックしながら情報を集めてパターンを探すのがおススメです。
注意
ダイヤが乱れないように平日の昼間や深夜に運転されることが多いです。
深夜の場合は駅への不法侵入や近隣への迷惑行為が
問題となっているのでマナーを守って撮影しましょう。
やり方のまとめ比較
お金 | コネクション | 信ぴょう性 | 新鮮度 | その他 | |
知り合い | ¥0 | 必要 | 高(ガセ有) | ~当日中 | 3つの中で1番コスパが悪い方法 |
SNS | ¥0 | 不要 | 低 | ~当日中 | ブログ・専用アプリでもわかる |
情報誌 | ¥1000程度 | 不要 | 高 | 月1更新 | 甲種なら鉄道ダイヤ情報一択 |
さいごに
いかがでしたか?
今回の内容は少し難しかったかなと思います。
私はほとんど甲種輸送は見たことがありませんが
子どものころみた電車のビデオの中に「機関車に引っ張られる山形新幹線400系」の映像があり
なぜかインパクトが強かったのを覚えています。
あれから10年以上たってこれだけの情報を数年かかって集めたので
それまでずっと見たくてヤキモキしていました。
今回の件は参考になればとおもっています。